ぼそんの東欧見聞録〜リトアニアに住んでみました〜

大学院で量子論の研究をしていましたが、訳あって1年間リトアニアで働くことになりました。4月から5月末までは英国に滞在し、その後リトアニアへ。   リトアニアも含め欧州の情報を徒然なるままに記します。

LEAN VISITS IN EUROPEと日本の品質改ざん問題について

今月中旬、EU-JAPAN centreが主催したLEAN VISITS IN EUROPEに参加させていただいた。今回はそのことについて触れたいと思う。

 

LEAN VISITS IN EUROPEというのは、毎年数回行われているもので、欧州の製造業幹部を対象に、ヨーロッパに在籍する企業の工場を訪問し、そこで行われているLEAN*1を学び合い指摘し合い、より良いLEANを創るというものである。より簡単にいうと、ある企業がLEANの手法を余すとこなく大公開するというものである。

これは双方にメリットがある。まず参加者は、訪問先が生産向上させた手法や思考を学ぶことで自社のそれと比較し、自社でも導入できるか、自社ならどうすればいいかが学べる。同時にホスト先の工場は、参加者から忌憚なき意見をもらい、より良いカイゼンの指針を享受することが出来る。実際今回のホスト企業が独自に考案したカイゼンとFMEAという手法を混合させた手法を公開し、参加者はメモを必死にとっていた。またワークショップ形式で、ホストの工場にあった問題点に関してグループごとに改善案を考案し、LEANの改善が行われた。

しかし、お気づきかもしれないが、とあるデメリットが存在する。そこで私は今回のホスト企業の人にこんな質問をしてみた。

”公開したらライバル企業に手法が盗まれ、相手が有利になってしまうのではないか?”

するとその人はこう答えた。

 

"公開するからこそ、ライバルを含めた他企業にLEANの手法が行く。だから我々はより良いLEANを考え続けなければいけない。いつまでも同じものに胡座をかいてはいけない。"*2

 

加えて今度は参加者達に同様の質問をすると、皆が上記と同じような回答を返してきた。正直この回答には驚いた。良い物を創り利益を出したいから、自社のLEANを秘密にするのではなく、生産性を向上させより良い製品を創りたいと常に考えているからこそ公開する。デメリットと考えず、自社が成長する機会だと捉えているのだ。

同時に日本でどうか考えてみた。

ある程度の日本企業の品質管理・生産管理は互いにブラックボックス*3であり、外部公開をしない。もちろん何社か公開している会社も存在はしている。実際本プログラムでは年に2回程度日本企業の工場に訪問する。しかし今年そちらに参加した人から聞いたが、日本企業の場合、殆どが自慢で終わり、本音を言っても全然耳を傾けてくれないし、嫌な空気になるそうだ。だから忌憚なき意見を全然言えないと嘆いていた。サンプルが2人しかなく、あくまで今年の参加者なので一般化出来るかは微妙ではあるが、ヨーロッパ企業とは考えが全く異なる企業が存在することは確かである。

そしてタイムリーにも神戸製鋼三菱マテリアル東レ*4の品質データ改ざん問題がマスメディアで報道されている。日本の品質管理・生産管理は高レベルという神話は今や揺らいでいる。

 

日本人が考える品質管理・生産管理を、ヨーロッパの人々が必死に真似をしようとし、またそれをmodifyしてよりよいものを考案しようとしている。参加者も口を揃えてトヨタヲタじめとして日本の品質管理を見習いたいと言っていた。しかし、主観に過ぎないが、目標であるはずの日本をもはや超えているような気がした。

前述の不祥事が益々続けばJAPANブランドはどんどん失墜する。いや、これらは氷山の一角で、もう崩壊は始まっている。今度は日本企業がヨーロッパを目標にして品質管理・生産管理を向上する番ではないだろうか。そして自国に留まらず、すでにあるこのようなLEAN機会を活かし日欧でLEANを発展させる方向に向かっていくべきではないだろうか。

ホストの"いつまでも同じものに胡座をかいてはいけない。"という言葉が頭をよぎった。

*1:品質管理や生産管理におけるカイゼンや効率化・向上を指す。トヨタカイゼンからLEANという考えが広まった。

*2:筆者訳

*3:もちろんどの企業も国際標準ISO9001に従っているはずである。しかし実態は

*4:ちょうどブログ更新のタイミングで出てきたので追加した。