ぼそんの東欧見聞録〜リトアニアに住んでみました〜

大学院で量子論の研究をしていましたが、訳あって1年間リトアニアで働くことになりました。4月から5月末までは英国に滞在し、その後リトアニアへ。   リトアニアも含め欧州の情報を徒然なるままに記します。

ソ連はいかにして、リトアニアで共産主義体制を築いたのか ~Gruto Parkasから~

共産主義を象徴するレーニン像は、もうほかの国では滅多にお目にかかれない。しかし、ここリトアニアでは、ソ連時代に存在した共産主義を象徴するレーニン像*1やモニュメント、新聞、橋といったものすべてが形を残し集めている場所がある。リトアニアの南部にあるGruto Parkas。共産主義時代にタイムスリップできる場所。

 

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入り口ではレーニンの頭がお出迎えしてくれる。面白いことに、入場ゲートまでの道中、左手側に、レーニンを始めとした共産主義を代表する人物の銅像がアルパカと一緒にお出迎えしてくれる。(下図)

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入場ゲートでチケットを買って、いざ内部へ。

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この施設は巨大な森林地帯に存在し、内部には、いくつか展示施設と道沿いに多数のレーニンを始めとした共産党を象徴する人物の像が配置されている。さらに動物園や子供が遊ぶ遊戯公園が併設されているという不思議な構造だ。レーニン像の横で子供がブランコで遊んでいた。

 

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銅像は、十人十色で様々なポーズをとっている。一つ一つが、力強く、権力の誇示をしている。レーニンの銅像を通し、当時どのように人々にレーニンという人物を流布していたのかが伺える。また、権力の誇示はどのようなポーズを通してできるのか、どういう構図ならば勇ましく見えるのか、分析することができる。人を見下す構図や、指をさす構図、天を仰ぐ構図、足組する構図。こういったポーズというのは、面白いことに、例えば交渉の場でも用いることができると思う。相手の優位に立つためには、自信がある余裕を見せ、ひょうひょうとして堂々な態度が必要である。こういった銅像において、相手の優位、が重要な要素である。そのため筆者は、銅像の構図が参考になると思っている。

施設には当時使われたプロパガンダ用ポスターや版画、新聞も多数目にすることができる。学校教育の場で実際に存在したレーニンの肖像画も展示されていた。レーニンの絨毯もある。レーニンの関連グッズが多数存在しており感心する。

そして当時の選挙結果に関する新聞もあり、面白いことに99.84%が選挙に行き、99.74%物人が共産党に投票したそうだ。まずこういったデータがあることが興味深いし、99.74%物人が共産党に投票せざるを得ない状況だったということも伺える。

当時、レーニンという偶像を用いて人々に思想の植え付けを行っていた。ある種、宗教的なものに通ずる。レーニンがいかに偉大で素晴らしいのかを本や銅像、肖像を通して啓き、共産党は素晴らしいものだと教育していく。リトアニアを統治したソ連は、このような改革を行った。更にロシア語を共通言語として教育する。小さいうちから教育することで、共産主義を肯定的に考える。大人に対しては、反発すれば牢に連行する。このことに関する新聞記事も実際にあった。何千名ものリトアニア人が牢に入れられ殺されたそうだ。またソ連軍により首都のビリニュスは占拠された。武力と刷り込みにより、ソ連リトアニア共産主義を拡げていった*2

この状況は、現在の某国に似ている。"偉大な"統治者を崇めるような銅像やポスターを作成し、学校でも教育する。反対するものは処刑。ソ連が崩壊したように、このままこのようなことを続けて、あの国は崩壊するのだろうか。様々な社会学者やコメンテーターはすぐ崩壊すると言い続けたが、未だに存続している。ソ連と異なる点は、例えばリトアニアのように元来いた民族のもとに、他の民族が思想を押し付けたことがないという点だ。自国と自民族の平和と安寧のため命を燃やした戦士達がリトアニアにはいた。某国ではどうか。国民に安寧は訪れるのだろうか――。

 

 

是非この施設でレーニン像を拝めに足を運んで欲しい。共産主義当時にタイムスリップすることができる。そして現代に戻って、世界を見渡して欲しい。おそらく少し見え方が変わると思う。

*1:数えていなかったが、おそらく40体ぐらいのレーニン像が存在している

*2:もちろん単純にこれだけではないが、この2つが大きな要因である。この施設にもそのことを示唆する新聞記事などが存在する