ぼそんの東欧見聞録〜リトアニアに住んでみました〜

大学院で量子論の研究をしていましたが、訳あって1年間リトアニアで働くことになりました。4月から5月末までは英国に滞在し、その後リトアニアへ。   リトアニアも含め欧州の情報を徒然なるままに記します。

リトアニアのCulture Nightから視る「活古創新」〜藝術の一夜〜

2017616()リトアニアが首都ヴィリニュスでは、Kultūros Naktis(Culture Night)と呼ばれる行事が行われた。18時から深夜2時まで行われたこの行事に、この日は良しとばかりに子供も夜ふかし。老若男女問わず街中に繰り出していた。

 

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そもそもこの行事は、2007年に始まり、芸術音楽文化を暗闇で楽しむ*1をコンセプトに、毎年この時期に行われ、今や700団体ものアーティストが参加するまでになった。博物館や美術館が無料で夜遅くまで開演し、街中に制作物と製作者があふれ、有名歌手が路上でコンサートを行い、市役所(後述)では野外演劇が行われた。更に政府の施設もこの日だけは一般に公開される*2ヴィリニュスの彼方此方で甘美な旋律や歓声、電子音が鳴り響く夜。

もちろん疲れたら、レストランで食事をするもいい、カフェでコーヒーとケーキを食べるもいい。はたまたバーでビールを飲むもいい。飲食店も休む間もなくこの日だけは夜ふかししているのだから。

 

 

個人的に藝術と掛け合わせることで芳醇な親和性を生み出していたものを2つだけ紹介したい。キーワードは「活古創新」*3である。

 

ひとつ目は、町外れにある廃墟。しかし、中は少々リノベーションされ今は作品展を行ったり、身体表現の劇場として使われていたりもしている。

 

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この夜、フランスを中心に日本舞踊を取り入れた身体表現をするSakurako*4がパフォーマンスをしていた。日本舞踊の要素が身体表現の随所に散りばめられていながら、西洋の踊りを組み合わせた動き。非日常の世界へと観客を引き込んでいった。この廃屋だからこそより一層観客を魅了する身体表現だったと思う。

 

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ここで強調したいのは、廃墟を身体表現の場としてリノベーションすることで、非日常性を引き出し、更に町外れにあるにもかかわらず、多くの観客を引き寄せる効果が見られたということだ。廃墟をそのままに、窓ガラスを新しくし、照明や音響設備を継ぎ足し、危ない段差を取っ払っていた。まさに「活古創新」である。

 

ふたつ目は、市役所。外観は神殿のように美しい。その外観を活かし、この日はオペラ「アイーダ」が野外公演された。街のど真ん中でオペラが流れると人々は足を止め注目する。昼間市役所だった場所が劇場に変わり人々は魅了される。日常空間に非日常を持ってくることで、自由に出入りできる空間を創り、面白いオペラになった。これもまた「活古創新」である。一時的ではあるが、古い建築物の市役所を舞台セットと劇場として利用する。

 

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 古きを活かして新しくを創る。ラメダスとアイーダのようにただ地中に埋もれさせていては、もったいない。新しい利用方法を考え利活用する。ここ、ヴィリニュスでは、それが藝術だった。古いものをいかに活かして藝術を表現するのか。他にどういう組み合わせが存在するのか。これらを考える事自体ももしかしたらこの企画の狙いなのかもしれない。

何はともあれ、ヴィリニュスを観光するならば、このKultūros Naktisの時に訪問するのがおすすめだ。あまり知られていない藝術の一夜を楽しめるからだ*5

*1:The best way to enjoy art, music and culture is in the dark. After all, before a movie at the cinema the lights are turned off, before a performance theater also turns off all lights, before orchestra or group performance concert hall are darkened. Only darkness lets us dive into the culture, also it release our imagination and let us enjoy the surrounding processes. Just plug the light and the magic will disappear.(HPより引用)

*2:私も実際リトアニア最高裁に潜入し裁判長の椅子に腰を添えさせていただいた。

*3:古きを活かして、新しきを創る。自分で思いついた言葉であるが、念の為検索エンジンにかけると6件だけヒットした。古いヒットで2010年。先を越された感はあるが、ここではオリジナルのものとして使わせていただく。

*4:日本で数年にも渡り、華道や茶道、剣道、能といった”道”を修めている。

*5:2017年6月現在において日本ではあまり知られていない。

インタビュー:英国で働く日本人に見る、働き方とワークライフバランスについて

先日、イギリスの語学学校ETCマーケティング担当として働く日本人、積田真奈美氏にお会いした。英国という土地に身を置く立場として、日本と英国の働き方の違いについて伺った*1

日本とイギリスの働きやすさの違いは何か――。

 

 

――まずはじめに、どうして英国で働こうと思ったのですか?

 

 大学を卒業後、英語を使う仕事がしたくて、日本で、英会話教室の営業として働いていました。もちろん給料も良かったから(笑)。

 でも英語って目に見えないものだし、顧客にどうやって価値を見せるかが大変だった。更に、自分の考え方と会社の考え方に相違があり、仕事に行き詰っていたの。そんな折、たまたま職場で知り合った英国人男性とお付き合いすることになったのよ。彼も同じような悩みを持っていて、英国に帰ると言ったの。だから私も勢いに任せて英国に行くことにしたの。お互い日本でなにか閉塞感みたいなものを感じていたから。

 英国に来てから仕事を見つけた。たまたま夫が働いているところで、マーケティングのポストが開いていたから応募したら、見事採用された。

 

――英国で働いてみて、閉塞感は感じますか?日本との働き方の違いなど教えてください。

 

 英国のほうが女性の地位が認められていてすっごい仕事がしやすい。日本では、どんなに頑張っても結局は男性が上。上司はほとんど男で、産休は日本では取りにくい。本当によく聞く話だけど、職場復帰したところで、同じ条件で働けるわけがないのに、働かせようとする。子供がいるから定時で帰ろうものなら、いいように思われなかったり嫌味を言われたりする。もちろん全ての日本の職場がそうとは言わないけれど、私の周りはすべてがすべてそうだった。女性として働こうとしても、先が読めない。そういう意味で閉塞感を感じていたのかもしれないね。

 でも英国は、さっきも言ったように女性の地位が保証されているの。どんどん上にもいけるし。しかも職業面接の時、性別や年齢を聞かない・気にしない。ありのままの自分を見てくれるの。日本では”What are you?”*2が重要だけど、こっちでは”Who are you?”*3のほうが重要なの。だからピアスをしていようが、タトゥーをしていようが、髪が染まっていようが関係なく、仕事ができるかどうかが重要になる。

 関連して、給料は野球の年棒制みたいになっているの。月に2,3回給料がもらえるから、こっちの人は基本貯金しないよね。「自分今週これだけ稼いだのか。」って思って、お金あると使いたくなるでしょ(笑)

 あとは、よく言われることだけど、こっちの人は自分中心だね。人の仕事を助けるという感覚は英国人にはない。日本の場合は、他の人の仕事を助けて、上司が帰るまで先に帰れないという暗黙の了解みたいなものがあるけど、イギリスはそういうのがない。定時になればすぐ飛び出していく。

 さらに、英国は副業が認められているとこが日本と違うね。私も副業しているし。他にもこっちの人は、趣味の時間を大事にするから、そこから自分磨きしたりして、次の仕事につなげたりすることもできる。ワークライフバランスがとても整っていると思う、日本だと、遅くまでずるずる仕事して、そのせいで次の時間が直前まで決まらない。疲れて趣味の時間も取れない。日本人は仕事が趣味かもしれないね。

 

――ここまで、話を聞くと英国のほうが職場環境が優位のように感じますが、逆に英国での職場に対する不満はありますか?

 

 職場によるのかもしれないけど、こっちの人は意外にも仕事が遅い。もちろん期限内にしてくれるんだけどね。そして仕事が雑。

 あと、職場にゴミが落ちていても、拾わずにそのままにしておく。これは、ゴミ拾いの仕事を奪ってはいけないという思いがあるのかもしれないけれども、基本落としたものは拾わない。そこかな。

 

――最後に、一言お願いします。

 

 他者を助けたりと、日本には日本の良さがあるのは確か。でも働き方改革云々言われている今こそ、女性の働き方を見直すことが大事。”Who are you?”を大事にし、女性の地位を認めている英国に働き方のヒントがあると思う。

 

私はこの対談を通して、2点思ったことがある。

(1)日本の丁寧さ

(2)日本における働き方改革の議論

 

(1)日本の仕事のほうが丁寧と感じる場面が非常に多い。身近な例で示すと、店員と清掃が挙げられる。店員は、商品の梱包が雑だったり、そっけなく商品を渡すことがほとんどである。日本のスーパーでは殆どの店員は丁寧に対応してくれる。またこちらのトイレは、掃除後でも汚い。日本のトイレの綺麗さには、本当に驚く。日本には「お客様は神様」という考えがあるから仕事が丁寧なのかもしれない*4

この丁寧さは、確かに海外では日本の武器になると強く感じた。

 

 

(2)英国と日本の年間平均労働時間を比較することにした。*5

 

  データからもわかるように、日本人のほうが労働時間が多い。更に上記の日本のデータには、残業時間が含まれていないので実際はもっと多く働いている。もちろん、単純に労働時間を比較して、多い少ないの議論はあまり意味がないように思える。実際アメリカのほうが年間平均労働時間は日本よりも多い。例えば、労働生産性=GDP/(就業者数×労働時間)を算出し、そこから働き方の効率を比較する方法もある。実際に、2015年度を比較すると、

 英国 =86,490ドル

 日本 =74,315ドル

である*6

英国のほうが効率がよく見えるが、このような比較をしても、GDPに依拠するので*7、100%自身を持って「英国のほうが効率よく仕事をしていることが定量的にわかる。」とは断言できない。

しかしながら、真奈美氏が指摘するように、多く働いている方が、自分の時間が取りにくいことは確かである。自分の時間を確保し、ワークライフバランスを整える。そして、重要なことは、最小時間で最大効率の仕事をすることではないだろうか。 

 働き方改革は、最小時間で最大効率という最適化問題を解くことだと思う。

*1:もちろん個人の感想であり主観的な部分もあるが、日本にいる日本人よりも日本と英国を比較でき、日本を客観的に見れるのは確かである。

*2:自分がどこ出身で、どこに属していたのか。いわゆる学閥や肩書。

*3:自分がどういう人間なのか。何ができるのか、どんなことがしてきたのか。

*4:一方で、この結果モンスターカスタマーが日本で生まれるのも確かである。

*5:出典:"OECD.stat", 2016.

*6:"OECD.stat, 2016"のデータを使用し計算した。

*7:日本は現在新しいGDP体系(2008SNA)を使っているが、データは旧体系(1993SNA)を使用していることもある。2016年度データが見つからなかったのでやむを得ず2015年のデータを使用。

Bournemouthにおけるホストファミリー制度と地方創生

 朝鳥の囀りで目が覚める。私は現在、英国はBournemouthにいる。この地区は英国の南部に位置し、美しく海に面するためリゾート地としても知られている。イースターの現在、多くの観光客で賑わっている。

 

 

 しかしこの地区を支えているのは観光業だけではない。街をよくよく見渡すと、語学学校が多く存在していることに気づく。(私が見つけた範囲でも10つ)実際某検索サイトを使うと、20以上存在していることが確かめられる*1。世界中様々な地域や国からイギリスに語学を学びに老若男女がここBournemouthに集うのである。実はこの語学学校が存在する事によってBournemouthの経済が支えられている。

 まずわかりきったことだが、語学学校の存在により外部から人が流入してくる。そのため、語学学校の周辺の商店でお金を落としてくれる人が、学校がなかった場合よりも増える。語学学校の周辺にはカフェやレストランが多く、平日はよく学生がカフェで屯する光景も見受けられる*2

 そして語学学校に通うにあたり、必要とされるのが、ホストファミリーの存在である。ホストファミリーにはaccommodation feeとしていくらかお金が入ってくる。これが経済を支える一番の要因ではないかと考えている。これを詳しく見ていこう。

 

 

 前提としてBournemouthの物価を示そう。ランチの平均金額は、5~6ポンドである*3。下の写真は5ポンドで食べられるトルコ料理である。そしてカフェでコーヒーを飲む場合、カフェラテやエスプレッソの平均金額は約2.5ポンド、カップチーノは約2.8ポンドである。水に関して言えば、500mlのvolvicがスーパーでは0.55ポンドである。500mlのファンタオレンジ味は、平均で1ポンドである。更に、求人広告によると、クレーム対応は最大23,000ポンド、ウェブデザイナーでも最大30,000ポンドの年収だそうだ。

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 次に具体例を移ろう。例えばETCを通してのホームステイの場合、一学生あたりaccomodation feeとして一週間170ポンドをETCに支払う*4。一日あたり、24.3ポンドとなる。この中にETCの仲介料があると仮定して、一学生あたり一家庭20ポンドが毎日支給されているとしよう。すると、1ヶ月で平均610ポンド得られる計算になる。20人程度に聞きこみをすると一家庭あたり平均3人の学生を迎え入れているようである。これより一家庭月1,830ポンドもらえることになる。年間にすると、21,900ポンドにもなる。これはかなりの収入になっている。しかもこれに加えて皆自身の仕事を持っているので、年間所得としてはもっと行く。語学学校のよるホームステイ制度の恩恵により、Bournemouthの多くの人々は生活出来ているようである。

 

 

 Bournemouthの例から何が言えるだろうか。例えば日本のいわゆる地方で同じことをしてみてはどうだろうか。日本語を学びたいという人向けの語学学校を開き、ホームステイを導入する。学生にとってのメリットは日本の田舎暮らしを体験しながら、場合によっては外国語が全くわからない日本人家族と寝食をともにすることで、日本語の勉強になる。日本の田舎暮らしというのはインバウンドビジネスでも注目されているため、ニーズはあるのではないだろうか*5。また、日本人のおもてなしの心はイギリスの家庭よりも大いにあるはずで、おいしくない食事や冷たい対応、ひどい洗濯はないと思われる*6。そして上記で見てきたようにホスト側にも収入というメリットがある。ホスト制度が地方における新たな収入源となるのではないだろか。

 地方インバウンドビジネスは日本のあちこちで昨今流行っている。地方に語学学校とホストファミリー制度を組み合わせることで、新たなインバウンドビジネスが成り立つのではないだろうか。もちろん問題点も考えうるが、これが、ひいては、地方創生に繋がるのではないだろうか。

 

  気づけばもう日が暮れてしまったので、ここで筆を置きたいと思う。

*1:Bournemouth language schoolと検索してみればわかる。

*2:"多い"という感覚は、新宿駅周辺で居酒屋を含む食事どころを見つけるのと同じ感覚である。

*3:因みにサブウェイはハーフサイズで全品平均3~3.5ポンド

*4:サンプルの数は9人分しかないが、皆同じ金額だったため、演繹的に全学生が同じ金額を払っているとした。

*5:具体的なデータを取ってくるのに疲れました・・・。

*6:個人的経験に基づく感想です。

前説:

 ブログを始める前に簡単に経緯を説明しよう。大学院で理論物理(超伝導)を専攻していたある時、Vulcanus in Europeというプログラムが目に入った。詳細はリンクを見ていただければわかるが、簡単に言うと一年間欧州企業でインターンシップができる金がもらえて海外に行けてラッキープログラムで、外国語の語学研修まで付いている。頭が超伝導していた私は、息抜きがてらどうにかこうにか締め切り前日に書類を書き上げ、当日東奔西走し、書類を提出しに行った。

 

 どうにかこうにか1次2次選考を通過した。3次選考は欧州企業とのマッチング面接であった。ドイツ・フランス・スペイン・・・。見知った国が並ぶ中、その5文字があった。(※正確には英語で書かれていたので9文字)

リトアニア(Lithuania)

スタートアップが盛んであり、杉原千畝のおかげで親日家が多い国である。そしてgooglenasdaqが投資先としても近年注目している*1。一方で、日本人がほとんど住んでおらず、あまり行かない国。現地の情報もあまり手に入らない。加えてVulcanus in Europeではまだ誰も行ったことがない国。非常に魅力を感じた。

 

 ふと、岡本太郎の言葉を思い出した*2

よく考えてみてほしい。あれかこれかという場合に、なぜ迷うのか。こうやったら食えないかもしれない、もう一方の道は誰でもが選ぶ、ちゃんと食えることが保証された安全な道だ。それなら迷うことはないはずだ。もし食うことだけを考えるなら。

 そうじゃないから迷うんだ。危険だ、という道は必ず、自分の行きたい道なのだ

 

  別にリトアニアを危険と言いたいわけではない。しかし王道のドイツや華のフランスから逸れた、我々日本人のあまり知らない国であることは間違いない。

 

 そんなこんなで無事企業との面接も終わりリトアニアに行くことになった次第です。

 前説終了。

 次回から真面目に書きます。

 

*1:https://japan.zdnet.com/article/35066046/

*2:自分の中に毒を持て より